2016年2月20日土曜日

幻の公演

前日には会社で大きいイベントがあり、打ち上げが深夜3時近くに及んだものの、
2ヶ月ぶりの公演に張り切っていた私は、なんとか気合いで寝坊を40分に収め、
10時28分発の新幹線さくら号に飛び乗って劇場へ向かった。

私がこれまでに見た10回の公演のうち、
チーム間アンダー、特別公演、生誕祭、卒業公演などの特殊な公演が5回あり、
たまたま私が入ったときに何かいつもと違うことをやっている確率が高いのだが、
今回は意図せずして今までで最も特殊な公演となってしまった。

事が起こったのはユニット曲4曲目、おしめしの終盤でのことである。
バリバリと変な音が聞こえ、最初はどこから音が出たのかわからず、
あまり気にしてはいなかったのだが、セリが上がった状態で後ろに捌けていくとき、
セリの高さが合っていないことに気が付いた。
「あれ、いつもこんな変な段差ついてたっけ?」と不思議に思っていると、
次の20人姉妹に入ってもセリが下がらず、そこで機材トラブルであることを理解した。

特に舞台装置の故障となると、その場で修理してそのまま続行ということは、
安全上の理由で難しいことはなんとなく感じていた。
続ける方法としては、手動で故障したセリを下げ、
その後はセリを使わない演出にすることなどを予想していたが、
しばらくの中断の後に開いた幕の先には高く上がったままのセリが見え、
若ちゃんがアナウンスをする前に私は公演の中止を悟った。

誤解のないよう言っておくが、私は公演の中止に一切不満は持っていない。
結果的に補償として今回の入場者全員に100発98中権利が付与されることになり、
基本的に返金対応は行わないとのことだが、
私はもし「全額返金します」と言われても、返金の申請をするつもりはなかった。
それは好きな曲が多いユニットまでは見られたからとかそういうことではなく、
私なりのHKTへの信頼の表明である。
舞台装置も有形のものである以上、永久に稼働し続けるものではない。
それがたまたま公演中のタイミングで故障するのは仕方のないことだ。
大切なのは、なるべく空白時間を作らないようにとメンバーが頑張ってMCで繋いでいたこと、
そして必死に観客の満足を考えて結論を出したというスタッフの姿勢が見えたことである。



公演の最後、舞台上から捌けるときに、はるたんは涙を流していた。
悔しさ、もどかしさ、やるせなさ、不安、色々な感情が渦巻いての涙なのだと思うが、
あの涙は我々ファンのために流した涙である。
そもそも機材トラブルなのだから、メンバーが負い目を感じる必要は一切ないのだ。
しかし、ファンを楽しませることに使命感とも言うべき覚悟を持って臨んているはるたんは、
それを「仕方ない」で処理することを自分に対して許さなかったのだろう。
私はユニットまででも十分に楽しませてもらったのだが、
きっと彼女にとって「十分」では不合格で、常に期待以上のものを提供しようとしているのだ。
アイドルとして、人間として、はるたんの尊敬すべきところはたくさんあるのだが、
私は今日、「社会人として」尊敬の念をはるたんに抱いた次第である。



もちろん、最後まで見られなかったことが残念でないと言えば嘘になる。
ただ、今回はトラブル対応を通して、HKTという組織に対する信頼を深める結果となった。
再来週は今年に入って初めて土日共に公演があるので、
どこか一つくらいは入って、今日の分も楽しんできたいものである。

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